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コレラ流行の過去と現在

(この記事は医心伝心からの転載です)

コレラは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することによって感染する病気です。下痢とそれに伴う脱水症状が主症状であり、軽症で済む場合も多いのですが、体力の弱い高齢者や乳幼児などは重症化して死亡するケースもあるので依然として注意すべき感染症です。

上下水道が完備し衛生環境の良い我が国での国内発生は少ないですが、世界では毎年数十万人の患者が発生していると言われています。

 

○コレラの定義

コレラ菌は細胞壁表面の抗原により200種類以上の血清型に分類されていますが、その中でコレラ毒素を産生するのは、O1型もしくはO139型のコレラ菌です。WHOの報告基準では、コレラ毒素を産生するO1血清型コレラ菌およびO139血清型コレラ菌によるものがコレラと定義されており、わが国でも同じ定義が用いられています。また、O1型コレラ菌は生物学的特徴の違いからアジア型(古典型)とエルトール型の2種類に分類されています。

○世界におけるコレラの流行

コレラはもともとインドのガンジス河下流の風土病であったものが、交通の発達にともない世界各地に拡がったと考えられています。記録上、コレラは過去に7回の世界的流行(コレラ・パンデミック)を起こしています。

第1次パンデミック(1817〜1824)から第6次パンデミック(1899〜1923)までは、すべてインドのベンガル地方から拡大し、原因となったのはO1血清型の古典型(アジア型)コレラ菌でした。

1961年にインドネシアのセレベス島に端を発した第7次パンデミックは、O1血清型のエルトール型コレラ菌が原因です。この流行は現在でも世界中に広がり終息する気配はありません。

また、1992年にはインド南部のマドラス(現チェンナイ)からO139型コレラ菌による流行が発生しました。以来、O139型コレラ菌はインドとバングラディッシュで散発的な地域的流行を繰り返していますが、世界規模での流行は起こっていません。

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近年は水害を受けた地域や上下水道の不備な地域で大規模な流行が発生しています。

コレラで352人死亡 ナイジェリア、6千人感染
パキスタン洪水でコレラ拡大か 被災地で患者確認
ジンバブエ、コレラによる死者が1500人以上に

○日本におけるコレラの流行

日本でのコレラ発生は、第1次コレラ・パンデミックが日本へ及んだ1822年が最初です。その後、上下水道の整備される1920年代ごろまで、数万から数十万の患者が発生する流行を何回か繰り返しました。

現在、我が国におけるコレラは、海外で感染し国内に帰国してから発症した輸入感染症例が多いと言われていますが、汚染された輸入魚介類から感染したとみられる国内発生例の報告もあります。

ニュースBOX:県内の60代男性がコレラ感染 /茨城

また、国内でも時に集団発生が認められています。有名なのは1977年に和歌山県で起こった集団発生です。東南アジア方面のコレラ汚染地帯からの帰国者が感染源と推測されており、この時は1名が死亡し、患者は最終的に101名に上りました。その後も現在に至るまで、日本各地で集団発生が散発的に報告されているという状況です。

常日頃利用する飲食店での食中毒により感染するケースも多いことを考えると、大流行こそないものの日本においても無視できない感染症であると言えるでしょう。

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