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うつ治療は「薬物偏重」...とはいうけれど

5月4日の読売新聞に、以下のような記事がありました。

 国内の患者数が100万人を超えたうつ病の治療について、読売新聞が3~4月、全国の精神科診療所にアンケート調査を行ったところ、7割が「日本のうつ病治療は薬物に偏っている」との認識を示した。
(中略)

 最近増えたとされる軽症患者に行う最初の治療は、「薬物治療だとは思わない」が41%。優先すべき治療として、患者の話を聞いて問題解決を図る精神療法や、仕事を減らしたりする「環境調整」も多く挙がった。英国の診療指針では、軽症者の最初の治療は、カウンセリングなどを勧めている。
(引用:YOMIURI ONLINE)

確かに、最近よく言われる"いわゆる軽症うつ病"という状態が、薬だけでうまくいくとは、私も思いません。薬を使わずとも良くなるのは、もちろん結構なことです。しかし、「日本のうつ病治療は薬物に偏っている」と記事にされると、『薬を処方するのは、良くない治療』という印象を誘導しかねないなぁとも思います。

薬は手段です。メリットもあればデメリットもあります。治療全体のなかで、期待されるメリットをどう組み込むか、懸念されるデメリットをどう組み込まないかというところが重要です。それに、案外見落とされがちですが、精神療法やカウンセリングにも"副作用"はありますよ。

ところで、一人30分のカウンセリングをしたとしましょう。そうすると1日8時間の診療時間で16人の診察になります。1日16件のカウンセリング料で医療経営が成り立つかといえば、今の診療保険点数では不可能だというのも現実です。ここにも大量疾患大量治療という構造があります。数多くの患者さんを診ないと儲からない。儲からないどころか、収益が出ないので、そもそも事業として成り立たない。こういう構造は精神科に限らず、医療全般に横たわっています。

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